続けて二つの舞台を見てきました。
一つは17日、大手町日経ホールでの、イッセー尾形の一人芝居「わたしの大手町」。
二つ目は19日、中野ZEROホールでの、「立川キウイ 真打昇進の会」です。
イッセー尾形は三回目になりますが、今回は新作ではなく、今までの何と600以上あるネタの中から選りすぐったもの。
どれも面白かったですが、二つ目の、引越し業者のアルバイトの話が特に面白かった。
そのアルバイトの若者は、金髪で野球帽を前後反対にかぶり、口のきき方も全然なってないような奴。夜中の2時の指定で、引越し現場に行くと、母親と子供が一人。しかも荷物は布団が一組だけ。
奥の薄暗い部屋に置かれた、その布団をチラッと見ると母親が、「あの中に旦那が入っているの」というような事を言いだします。
旦那さん、随分小さいんですね、みたいな事を言うと、「二つに折ったのよ」というような事を言います。
何処へ運べば良いんですか?と恐る恐る尋ねると、「山の方」と答えます。
責任感も正義感も無いような若者が、サスペンス調の物語に巻き込まれていく様子が、実に面白い。そして物語では語られなかった背景などを、こちら側が勝手に想像出来てしまうような、底知れない奥深さがありました。
以前、イッセー尾形を見に行った時に、このブログで「落語に近いものを感じた」というような事を書きました。
人の弱さや虚栄心、もっと言ってしまえば、みっともなさ、を描いているという意味では、共通点があると思っています。
でも今回手法として気がついた決定的な違いは、イッセー尾形は一つの話の中で二役はやらないのですね。相手はいるわけですが、相手の台詞は自分が反芻するような形か、相手の台詞を連想させるような、自分の台詞やリアクションで見ている側に伝えるわけです。
故に物語が終始個人的な視点からのみ語られるわけです。
落語だと、お馴染みの「熊さん、ご隠居さん」のように複数の登場人物を、一人の噺家が演じます。ですので一つの事象に対しても、複数の視点があり、それがどこか物語を俯瞰して見ているような感じがするわけです。
これは表現方法としては、大きな違いだなぁ、と今更ながらに感じ入ってしまいました。
「立川キウイ 真打昇進の会」は、まことに立川キウイくんには申し訳ないのですが、家元、立川談志を見るのが目的でした。昨年、独演会のチケットが取れていたのに、体調不良のために中止になってしまって、今回は流石に出てくるだろう、と思ったのですが・・・。
出てきませんでした。助演で出ていた志の輔によると、電話がかかってきて、「どうも体が定まんねぇや。ダメだ」と大変元気そうに仰っていたとの事でした。
またキウイくんによれば、やはり電話をして「師匠、是非来てください」とお願いしたら、「何処だ」「中野です」「遠ーい」で終わったそうです。
その昇進会、前座の後にいきなり志の輔が出てきて、次に春風亭昇太が出てくるという豪華なもの。そして口上を挟んで、キウイくんの兄弟子でもある、立川左談次。
そして真打になった立川キウイ。前に出ていた人たちが、あまりに凄かったので、キウイくんも相当なプレッシャーがあったのでしょう。大汗かきながら、自分なりに古典落語の二つをミックスした創作落語を必死にやっていました。その意気や良しとしましょう!
中身については僕は落語に精通しているわけではないので、分かりませんが「何かやるぞ!」というエネルギーは伝わってきました。
客席も、「何かやろうとしてんだから、暖かく見守ってやっか」という雰囲気に満ちていて、それはそれで気持ちの良いものでした。
その雰囲気も、家元談志の人格が作り出しているものなのかもしれません。先日、横浜にぎわい座の寄席で、誰かが言っていたのですが、談志が出てくる時の、客席からの掛け声に「ちゃんとやって!」というのがあるそうです。何か懐の大きさを感じませんか?引き受けているものが深いような感じがするんですよね。
ちなみに掛け声って普通、「待ってました!」とか、いわゆる褒め言葉ですよねぇ。「ちゃんとやって」というのは・・・・。やはり生の談志を見てみたくなります。ちゃんとしてなくても。
舞台を見ていて、「自分らしさ」という事を考えます。イッセー尾形にしても、志の輔にしても、キウイくんにしても、「自分らしさ」というもののと格闘しているように思えます。
もう少し言えば、「自分らしい表現」という事になるのかもしれません。
唐十郎が以前言っていました。「人というのは、何かを表現(表出)しないと、どんどん窒息状態になっていく。そして表現したものに自分らしさを見つけたりすると、ちょっと安心したりするのです」。
僕にとっての「自分らしさとは?」「自分らしい表現とは?」・・・難問だなぁ。でも、探しています。
取り留めのない文章の後で申し訳ないのですが、ライヴ告知です。
3月11日に地震のため中止になった、白浜久さんのライヴ。8月6日に開催されます。
色々な思いがあります。でも、その思いを超えた「白浜さんらしい」素敵なライヴになると思います。詳細アップしますので、是非お集まり下さい!
H.Shirahama project Live 2011『四半世紀決済!』
8月6日(土) open18:00 start18:30
LIVE GATE TOKYO@EBISU
チケット料金¥4000
出演:白浜 久、田中一郎、斉藤光浩、榎本 高、西川貴博
前売り券:店頭、ローソン・チケットにて、発売中!
(問)LIVE GATE TOKYO@EBISU 03-3400-9001